上杉周作

仮想通貨業界で話題の「テザー疑惑」を調べた「テザーレポート」の和訳。本当にテザーがビットコイン価格を吊り上げているのか?

いわゆる「テザー疑惑」が話題ですが、テザーの価格が、ビットコインの急落と緊密に連動していることを示した匿名レポート「テザーレポート」を、統計知識ゼロのぼくが連続ツイートで読んでみました。

テザー疑惑とは

日経新聞(2018/2/1)「中国の人気仮想通貨が落とす影 ビットコインに下落リスク」より抜粋

仮想通貨市場を巡って、海外で新たな火種がくすぶっている。火元は中国で人気のある仮想通貨「Tether(テザー)」。ビットコインなどとは違ってレートが米ドルに固定されているのが特徴だが、裏付けとなるドル資産を持っていないとの疑惑が浮上している。テザーは当局が仮想通貨取引を規制している中国の投資家が仮想通貨を売買するための「抜け道」に使われることが多いとされ、中国人の人気を集めていた。テザーの信用が失われるような事態に発展すれば、仮想通貨市場に流れるチャイナマネーが細る可能性がある。ビットコインなどへの影響も必至だ。

1月31日、テザーを発行する企業に不正の疑いがあるとして米商品先物取引委員会(CFTC)が調査していると伝わった。海外メディアによれば、CFTCは仮想通貨テザーを発行する企業(企業名=テザー)と仮想通貨取引所大手のビットフィネックスに対し、2017年12月6日に召喚状を送付したという。両社はともに香港に拠点があり、経営者は同じだ。

テザーに関してはこれまでも多くの疑惑や不祥事があった。17年4月には銀行との関係が絶たれ、一時的に出金ができなくなった。同11月には外部からハッキング攻撃を受けて3000万ドル強(約31億円)が盗まれた。最近では監査会社との関係を解消していたことが指摘され、内部管理体制も疑問視されていた。

CFTCが調査しているとされるのが、テザー社が十分な資産を持っていない可能性だ。テザー社は仮想通貨テザーを保有する投資家から換金要請があれば、同額のドルを送付しなければならない。1月31日時点で仮想通貨テザーは約22億ドル(約2400億円)相当が発行されており、理論上は同程度のドルを持っている必要がある。万が一、不足していれば換金要請に応えることができないため、投資家は損失を被る。

日本ではさほどなじみはないが、中国では仮想通貨テザーはビットコイン同様に人気がある。その理由を探ると、中国の投資家が他の仮想通貨を売買するのに欠かせないツールになっていることが分かった。

中国政府は資本流出を防ぐため、海外送金や外貨両替に対する規制を繰り返し強化してきた。その一環で、中国政府は17年秋に国内の仮想通貨取引所を閉鎖した。中国の投資家が仮想通貨を売買するには海外の取引所を使わざるを得なくなった。

ただ、海外取引所の利用も簡単ではない。そこで生み出されたのがテザーを使った「抜け道」だ。仮想通貨に詳しい大和総研の矢作大祐氏によると、香港や韓国の取引所で一旦テザーを買い、それをビットコインなどに替えれば、当局の目を盗んで他の仮想通貨が売買できるという。テザーはレートが米ドルに固定されているため価格変動が小さく、投機性が小さいとして当局からにらまれにくい。取引方法も個人と取引所との相対取引を用い、記録が残らない手段が取られているようだ。

Wired Japan(2018/01/31)「仮想通貨「テザー」の疑惑が本当なら、市場が崩壊するかもしれない──信頼性を損なう“事件”が続発」より抜粋

暗号通貨(仮想通貨)は、その不安定さからFUD(恐怖・不安・疑念)が支配する世界だ。そして現在、なによりもFUDを煽っているのが、Tether(テザー)という独自通貨である。

ビットコインをはじめとする多数の暗号通貨とは異なり、Tetherはいわゆるステーブルコイン(価値が変動しないよう設計された通貨)だ。大半の暗号通貨が激しい価値変動の影響を受けやすい一方で、Tetherは米ドルの価格に連動していることを謳っている。ビットコインとドルの取り引きを銀行で行うことは厄介で費用もかかりがちだが、Tetherはシンプルかつ低コストで、スピーディだ。

ところがこの数週間、懐疑論者たちがTetherのほぼすべての側面に一斉に疑問を投げかけている。その疑惑とは、流通するTetherの総額が、運営会社(通貨と同名のテザー)が保有する米ドルの総額と本当に合致するのか──という点だ。

もしテザーが本当に流通額と同額の米ドルを保有しているのであれば、理論上は保有者全員がいつでもTetherを同社に売り戻し、同額のドルを入手できる。この信用こそが、Tetherの米ドル連動制を支えているわけだ。

揺らぐTetherの信頼

Twitterや掲示板のReddit、ブログ、そして先日開催されたビットコインカンファレンスなどでは、外部監査を通じて米ドルの準備高をテザーが証明するよう求める声が噴出していた。テザーはその要求に応じていないうえ、同社の監査に向けて準備していた監査法人フリードマンLLPとの関係を打ち切ったという噂を公式に認めた。

『ブルームバーグ』は1月30日(米国時間)、米商品先物取引委員会がテザーに召喚状を送付したと報じている。同社の広報担当は「当社は定期的に捜査当局の法的審査を受けており、監督機関も調査を行っています。このような要望に対して一切コメントしないのは当社のポリシーです」としており、そのほかのコメントを控えている。

もし流通額と同額の米ドルを保有していないなら、理論上はテザーはいくらでも通貨を発行できることになる(これとは対照的に、ほかの暗号通貨は厳格かつ予測がつくルールに従って新しいトークンを生成する)。ほかにも、ビットコインの価格下落に合わせたタイミングでテザーが新規の通貨を発行し、Tetherを使ってビットコインを買いあさる──といった可能性も指摘されている。

一部の観測筋は、こうした購入行動が結果的にビットコインの価格をつり上げているのではないかと指摘している。ウォールストリートの元トレーダーで、現在は暗号通貨の新興企業各社に投資してコンサルティングを行うジル・カールソンは、次のように語る。「ビットコインなどの暗号通貨の普通ではない価格高騰は、Tetherが何もないところから発行されたことが原因の可能性があります。これは重大な懸念材料です」

もし投資家がTetherに不信感を抱けば、暗号通貨版の取り付け騒ぎに発展する可能性がある。また、Tetherは暗号通貨取引所の安定化に貢献している。その崩壊は、一部の取引所を完全停止に追いやり、数十億ドルもの資産を一晩で消失させ、ビットコインなどの新技術に対して高まりつつあった一般の関心を損なう可能性がある。

(中略)

問題の兆しが見えてきたのは昨春のことである。台湾銀行とウェルズ・ファーゴという大手2行が、Tetherの取り引きから手を引くことを明らかにしたのだ。

さらにこの2つの銀行は、取引所のビットフィネックスとの取り引きも中止することを明らかにした。というのも、ビットフィネックスとテザーは、どちらも最高経営責任者(CEO)、最高執行責任者(COO)、最高戦略責任者(CSO)、最高コンプライアンス責任者(CCO)、そして法律顧問といった経営トップが同じだったからだ。

それでもテザーは、裏づけとなる米ドルの確保についてまったく言及していない。それどころか、新しいTetherを発行し、それをビットフィネックスの口座に預け続けている。

(中略)

テザーは昨年9月、監査の代わりと称して準備金の存在を実証するという文書を公表した。だが、提携金融機関の欄は黒く塗りつぶされていた。それ以来、Tetherの流通総額は4億5000万USDTから、22億8000万USDTへと約5倍に増加している(USDTはTetherの単位)。テザーは、この1月だけでも8億5000万USDTを新たに発行している。急ピッチで新たなTetherが発行されていることから、テザーの目的に関する疑惑が高まっている。

先週、Tetherの新規発行に関する統計分析が匿名で公開され、暗号通貨の業界で広まり始めた。このレポートは、ここ1年で新しいTetherが発行された時期が、ビットコインの急落と緊密に連動していることを示唆している。これまでも指摘されてきたことだが、それを裏づける重要な数字も出てきた。

今回は上記太字の部分、「Tetherの新規発行に関する統計分析」を翻訳しました。

ツイート

(iPhoneなどで閲覧されている場合、ツイートをタップすればツイッターアプリが開きます。そちらのほうが読みやすいかもしれません)

追記: 冒頭で引用した記事の内容を思い出してください。

テザーがもし流通額と同額の米ドルを保有していないなら、理論上はテザーはいくらでも通貨を発行できることになる(これとは対照的に、ほかの暗号通貨は厳格かつ予測がつくルールに従って新しいトークンを生成する)。ほかにも、ビットコインの価格下落に合わせたタイミングでテザーが新規の通貨を発行し、Tetherを使ってビットコインを買いあさる──といった可能性も指摘されている。

一部の観測筋は、こうした購入行動が結果的にビットコインの価格をつり上げているのではないかと指摘している。ウォールストリートの元トレーダーで、現在は暗号通貨の新興企業各社に投資してコンサルティングを行うジル・カールソンは、次のように語る。「ビットコインなどの暗号通貨の普通ではない価格高騰は、Tetherが何もないところから発行されたことが原因の可能性があります。これは重大な懸念材料です」

追記: こちらの記事についての反論

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プロフィール

上杉周作。1988年大阪生まれ。日本とアメリカ育ち。シリコンバレー在住。エンジニア。画像は NHK「クローズアップ現代+」にゲスト出演したときのもの。

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